大関取りとは?三場所三十三勝の壁に挑む力士たちの物語

豆知識
               

監修者・水口 剛

元力士・祥鳳剛(本名:水口剛)。春日山部屋に所属し、2004年に初土俵、幕下東四枚目まで昇進。白鵬関の代理として弓取り式を務めた経験を持つ。
引退後はYouTubeチャンネル「お相撲ぐっちゃんねる」の運営や稽古会の主催、相撲体験イベントの企画などを通じて、相撲文化の国内外への発信に尽力。
Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』では炎鳥役として出演したほか、舞台パフォーマンスなどにも参加。
現在は訪日外国人向けのインバウンド相撲イベントや相撲ショーを開催するほか、パーソナルトレーナーとしても活動し、相撲の魅力を伝えながら健康づくりにも貢献している。

相撲界において大関取りとは、関脇や小結といった三役の力士が最高位の一つである大関昇進を目指す挑戦期間を指します。直近三場所での成績が特に重要で、目安は三役で三場所三十三勝。相撲ファンや外国人観客にとっても、この挑戦は相撲の大きな見どころです。本記事では、その基準、背景、そして力士たちの努力の裏側を詳しく解説します。

大関取りとは

大関取りとは、関脇や小結の力士が大関昇進を目指して挑む期間および成績争いのことです。日本相撲協会では「三役で直近三場所三十三勝程度」を目安としています。三場所で平均十一勝を安定して記録するという厳しい基準であり、単なる数字以上の内容が求められます。

さらに、昇進審査では「取組内容の充実度」「横綱・大関への勝利」「相撲の品格」なども重要視されます。勝ち星だけでなく、土俵上での姿勢や精神的な強さも大関昇進に欠かせない条件です。


大関取りの基本条件

項目内容
対象力士関脇・小結(いずれも三役)
昇進目安直近三場所で合計三十三勝前後
評価基準勝ち星・安定感・相撲内容・上位への勝利
判断機関日本相撲協会審判部会議

大関取りが注目される理由

大関は横綱に次ぐ地位であり、相撲界では「名誉と責任を兼ね備えた地位」とされています。昇進すれば、弟子志願者やスポンサーからの注目が集まり、名実ともに一流力士の証となります。
さらに、大関は「横綱への登竜門」としての意味も持っています。そのため大関取りは、単なる昇進争いではなく、将来の横綱候補が試される舞台でもあるのです。


ファンが大関取りを楽しむポイント

見どころ内容
緊張感ある取組三十三勝を達成できるかが焦点となるため、一番一番が重くなる
上位との激戦大関や横綱との対戦が増え、相撲の内容が濃くなる
ストーリー性失敗や再挑戦など、人間味あるドラマが生まれる

大関取りは結果だけでなく、そこに至るまでの過程が大きな感動を呼ぶ理由です。


歴代の大関取りの名場面

過去の大関取りには、相撲史に残る名勝負が多くあります。琴奨菊が日本出身力士として十年ぶりに大関へ昇進した際は、日本中が歓喜しました。
また、照ノ富士は度重なるけがで幕下まで転落しながらも再起し、大関復帰を果たした後、横綱へ昇進しました。その姿は「不屈の努力」の象徴とされ、相撲界の感動的な物語として語り継がれています。


大関取りの主な昇進例

力士名昇進時期三場所成績特徴
貴乃花1992年35勝若くして堂々の昇進
琴奨菊2011年33勝日本出身力士として久々の昇進
照ノ富士2015年34勝けがを克服して復活
貴景勝2019年33勝爆発的な突き押し相撲が持ち味

「三十三勝」という数字の意味

「三場所で三十三勝」という基準は、単なる数字ではなく、安定して上位陣を倒す実力の証明です。単に勝ち越すだけでなく、横綱や大関に勝利できるかが評価の鍵になります。
また、昇進の可否は相撲協会の会議で慎重に審議され、相撲内容の充実度や精神面の成熟度も考慮されます。連敗からの立て直しや粘り強い勝負を見せる力士は特に高く評価される傾向にあります。


大関取りの評価要素

要素内容
勝ち星三場所で三十三勝前後が目安
内容取り口の安定感、上位への勝利
精神力プレッシャー下で結果を出す強さ
礼儀・姿勢相撲道に対する誠実さも評価対象
人間性態度や言動も昇進審査に影響する

外国人力士と大関取り

外国出身の力士も多くが大関取りを経験してきました。ブルガリア出身の琴欧洲、モンゴル出身の白鵬や照ノ富士などがその代表です。彼らは日本語や相撲文化を学びながら、日々の稽古で技と精神を磨きました。
異国での挑戦は簡単ではありませんが、彼らの努力は世界中のファンの共感を呼び、相撲の国際的な人気向上にも貢献しました。

力士名出身国昇進時期特徴
琴欧洲ブルガリア2008年ヨーロッパ出身初の大関
白鵬モンゴル2006年大関昇進後、史上最多優勝を記録
照ノ富士モンゴル2015年怪我を乗り越え横綱へ

大関取り失敗からの再挑戦

大関取りは一度の挑戦で成功するとは限りません。多くの力士が惜しくも昇進を逃し、再挑戦を続けます。御嶽海や若隆景のように、失敗を経験した後も粘り強く実力を磨き、再び三役の座に返り咲く力士もいます。
相撲界では、このような「挑戦を続ける精神」が高く評価されます。負けから学び、再び立ち上がる姿こそ、観る者の心を動かす最大の魅力です。

力士名状況その後の結果
御嶽海昇進を逃す翌年に優勝を果たす
若隆景惜敗で見送り安定した上位力士として活躍
阿炎休場明けで復帰精神面の成長を評価され再挑戦中

大関取りを支える稽古と努力

大関取りを成功させるためには、日々の稽古が何より重要です。朝稽古では四股やすり足といった基本動作を繰り返し、体の軸と下半身の安定を磨きます。
また、取組だけでなく精神の鍛錬も欠かせません。連日の注目と重圧の中で、冷静さを保ちながら自分の相撲を取り続ける精神力が、昇進を左右します。

特に大関取りの期間中は、勝敗一つひとつが昇進に直結します。そのため、土俵の外でも生活習慣や食事管理、体調維持に細心の注意を払います。地道な積み重ねこそが、大関という名誉にふさわしい力士を育てるのです。


まとめ

大関取りとは、相撲界で最も厳しく、最も感動を呼ぶ挑戦の一つです。三場所三十三勝という高い壁を越えるためには、技術・体力・精神力の三要素すべてが求められます。
勝ち星だけでなく、取組の内容・相撲への姿勢・礼儀正しさまでもが昇進の条件に含まれます。観る側にとっても、大関取りは単なる昇進争いではなく、力士たちの人生そのものを映す舞台です。

この挑戦を知ることで、相撲の奥深さと魅力をさらに感じ取ることができるでしょう。
そして、大関取りはゴールではなく、横綱への第一歩です。力士たちの覚悟と努力が交錯するこの期間こそ、相撲という伝統文化の真髄が最も輝く瞬間といえるのです。

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