全勝優勝とは?大相撲で一度も負けずに勝ち抜く力士の誇り

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監修者・水口 剛

元力士・祥鳳剛(本名:水口剛)。春日山部屋に所属し、2004年に初土俵、幕下東四枚目まで昇進。白鵬関の代理として弓取り式を務めた経験を持つ。
引退後はYouTubeチャンネル「お相撲ぐっちゃんねる」の運営や稽古会の主催、相撲体験イベントの企画などを通じて、相撲文化の国内外への発信に尽力。
Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』では炎鳥役として出演したほか、舞台パフォーマンスなどにも参加。
現在は訪日外国人向けのインバウンド相撲イベントや相撲ショーを開催するほか、パーソナルトレーナーとしても活動し、相撲の魅力を伝えながら健康づくりにも貢献している。

全勝優勝とは、大相撲の本場所で一度も負けることなく優勝する快挙のことです。15日間を通して土俵上で勝ち続けることは、単なる強さを超えた精神力と集中力の証でもあります。この記事では、相撲初心者や外国人にも分かりやすく、全勝優勝の意味や価値を詳しく解説します。

全勝優勝とは何か

全勝優勝とは、15日間行われる本場所ですべての取組に勝利し、無敗で優勝することです。幕内力士の場合は15戦全勝(15勝0敗)が条件になります。優勝にもいくつかの種類がありますが、全勝優勝はその中でも最も価値の高い完全制覇とされます。
この記録は、力士が技術・体力・精神力すべてを極限まで高めた結果としてのみ実現します。勝ち星を積み重ねるだけでなく、15日間にわたって集中力を切らさず挑み続ける強さが求められます。


全勝優勝の条件と各番付の違い

大相撲では番付ごとに取組数が異なります。そのため、全勝優勝の条件も階級ごとに変わります。

番付取組数全勝優勝の条件特徴
幕内15取組15勝0敗最も注目度が高く、歴史に残る
十両15取組15勝0敗幕内昇進の有力候補になる
幕下7取組7勝0敗将来のスター候補とされる
三段目7取組7勝0敗地道な努力が実を結ぶ階級
序二段7取組7勝0敗新人力士にとって重要な一歩
序ノ口7取組7勝0敗相撲人生の最初の快挙

このように、取組数の違いがあっても「全てに勝つ」という意味は同じです。どの階級であっても、全勝優勝は力士にとって誇り高い成果です。


全勝優勝の評価とその影響

全勝優勝は、力士の強さを最も明確に示す結果です。1敗でもすれば記録は崩れるため、その達成は極めて困難です。特に横綱や大関といった上位力士が全勝優勝を果たすと、「横綱としての品格と実力を証明した」と高く評価されます。
また、下位番付で全勝優勝を達成した力士は、翌場所での昇進がほぼ確実になります。全勝は、相撲界での評価を大きく変える分岐点といえるでしょう。

成績呼称意味
15勝0敗全勝優勝完全勝利・最高評価
14勝1敗準全勝優勝の可能性大
13勝2敗高成績優勝実力を証明する結果

全勝優勝は数字の上でも圧倒的な評価を受ける成績であり、力士のキャリアを語る上で欠かせない要素です。


全勝優勝の歴史と名力士たち

全勝優勝は相撲史に残る大記録です。昭和の大横綱・双葉山は69連勝という不滅の記録を持ち、その中に複数の全勝優勝が含まれています。平成以降では白鵬が圧倒的な勝率と連続優勝記録を打ち立て、現代相撲の象徴となりました。

力士名全勝優勝回数主な時代特徴
双葉山8回昭和無敗の美学を体現
白鵬16回平成~令和最多全勝優勝記録保持者
貴乃花7回平成精神力の象徴とされた力士
朝青龍6回平成攻撃的な相撲で観客を魅了
千代の富士5回昭和後期筋肉の横綱と称された存在

彼らの全勝優勝は、それぞれの時代における強さと個性を示しており、相撲界の歴史を形づくる重要な記録です。


横綱の全勝優勝が特別とされる理由

横綱は「負けてはいけない立場」にあります。その中で全勝優勝を果たすことは、横綱としての責任を果たす最上級の結果です。横綱が全勝で優勝することで、相撲界全体が盛り上がり、観客も「本物の横綱」を実感します。
また、横綱の全勝優勝は歴史的な重みを持ち、力士の引退後も語り継がれます。技術・精神・統率力の全てを兼ね備えた力士にのみ成し得る偉業であり、その姿は相撲の理想像とされています。


全勝優勝を達成するための条件

全勝優勝は偶然では達成できません。日々の稽古、食事管理、体調維持、精神面のコントロールなど、あらゆる要素が噛み合って初めて成り立ちます。力士たちは取組後すぐに体を冷やし、翌日に備えて調整を行います。
また、取組ごとに相手の戦法が変わるため、柔軟な対応力も求められます。これらを15日間続けることがいかに過酷かを知ることで、全勝優勝の価値がより鮮明になります。


勝ち続けるための精神力

全勝優勝を狙う力士は、初日から千秋楽まで極度の緊張と戦い続けます。一つの油断が命取りとなり、1敗すれば夢が途絶えます。そのため、常に冷静でいなければなりません。終盤戦では、観客や報道陣の注目が集中し、精神的なプレッシャーが頂点に達します。
この状況の中で、力士が見せる冷静さや強い意志は、多くの観客に感動を与えます。勝ち続けることの難しさと、それを乗り越えた瞬間の喜びが、全勝優勝を特別なものにしているのです。


全勝優勝がもたらす影響

全勝優勝は、力士本人だけでなく、相撲界全体に影響を与えます。完全無敗で勝ち抜く姿勢は、若手力士にとって憧れの目標であり、相撲人気の向上にもつながります。特に外国人力士が全勝優勝を果たすと、世界的に注目され、相撲の国際的評価を高めるきっかけにもなります。
全勝優勝は単なる勝敗の記録ではなく、相撲の精神・努力・伝統の結晶です。その瞬間は日本文化の象徴として、国内外の人々の心に刻まれます。


まとめ

全勝優勝とは、力士が一度も敗れずに勝ち抜く最高の栄誉です。その達成には技術・体力・精神力の三拍子がそろう必要があります。無敗を貫くという結果は、長い相撲の歴史の中でも限られた者だけに与えられる称号です。
全勝優勝は、相撲道の究極の形であり、土俵に立つすべての力士が目指す理想です。その勝利の瞬間には、努力の積み重ねと精神の強さが結晶し、観客に深い感動を与えます。まさに全勝優勝は、相撲の美学と誇りの象徴なのです。

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