敢闘賞とは?相撲で最も「闘志」を称える特別な賞を徹底解説

入門
               

監修者・水口 剛

元力士・祥鳳剛(本名:水口剛)。春日山部屋に所属し、2004年に初土俵、幕下東四枚目まで昇進。白鵬関の代理として弓取り式を務めた経験を持つ。
引退後はYouTubeチャンネル「お相撲ぐっちゃんねる」の運営や稽古会の主催、相撲体験イベントの企画などを通じて、相撲文化の国内外への発信に尽力。
Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』では炎鳥役として出演したほか、舞台パフォーマンスなどにも参加。
現在は訪日外国人向けのインバウンド相撲イベントや相撲ショーを開催するほか、パーソナルトレーナーとしても活動し、相撲の魅力を伝えながら健康づくりにも貢献している。

大相撲で贈られる三賞のひとつ、敢闘賞(かんとうしょう)。この賞は、単なる勝敗ではなく「最後まで攻め続ける姿勢」を評価するものです。土俵上で見せた勇気と粘り、そして諦めない心が光る力士に贈られます。相撲を初めて観る人でも、この賞の意味を知れば取組の見方が変わり、より深く相撲の魅力を感じることができるでしょう。

大相撲の三賞とは

大相撲では、千秋楽の取組後に三つの特別賞が発表されます。これが「三賞」と呼ばれる表彰で、優れた成績や取組内容を見せた幕内力士に授与されます。

賞の名称評価される内容贈られる対象
殊勲賞格上の力士を破った功績大関や横綱を倒した力士
敢闘賞最後まで攻め続けた姿勢勝ち越し以上で積極的な相撲を取った力士
技能賞高度な技術を見せた功績多彩な決まり手を披露した力士

三賞はどれも力士の努力を称えるものですが、その中でも敢闘賞は「闘う心をたたえる賞」として最も感情的な共感を呼びます。勝敗以上に、どれだけ土俵上で力を出し切ったかが問われるのです。


敢闘賞の意味と評価基準

敢闘賞は、勝ち星の数ではなく「取組の内容と姿勢」によって選ばれるのが特徴です。どんなに苦しい状況でも前へ出る、守りではなく攻めの姿勢を崩さない力士が高く評価されます。

評価項目判断基準対象となる力士の特徴
攻めの姿勢常に前に出る積極的な相撲相手に押されても引かずに挑む
精神力負けても崩れない闘志立合いの集中力と粘り強さ
安定感場所を通じて安定した内容毎日の取組で取り口に一貫性がある

選考は、日本相撲協会の審判部と報道関係者が協議して決定します。勝ち越しは前提条件ですが、取組の内容が印象的であれば、成績以上に評価されることもあります。

敢闘賞の授与は千秋楽に発表され、表彰式では賞金と楯が授与されます。受賞者の顔には、勝敗を超えた誇りと達成感がにじみます。


過去の受賞例に見る敢闘賞の魅力

これまでの本場所では、数多くの力士が印象的な取組を見せ、観客の心をつかみました。特に初入幕や新入幕力士の奮闘は注目を集め、敢闘賞の受賞に結びつくことが多くあります。

力士名主な功績評価の理由
遠藤上位陣を次々と破る攻めの姿勢を崩さず果敢に挑んだ
高安けがを乗り越え勝ち越し土俵際での粘りと集中力
逸ノ城新入幕で二桁勝利巨体ながら柔軟な攻めを見せた
琴ノ若連敗から立て直し勝ち越し精神的な強さと冷静な取組運び

どの受賞例にも共通しているのは「土俵上での挑戦をやめなかったこと」です。観客の心を動かすのは、勝敗の数字ではなく、どんなに不利な状況でも諦めずに向かっていく姿勢なのです。


初心者にもわかる敢闘賞の見どころ

相撲を初めて観る人にとって、敢闘賞は理解しやすく感情移入しやすい賞です。勝敗だけに注目するのではなく、力士の表情や立合いの一瞬の緊張感を見ると、どれほど必死に戦っているかが伝わります。

観戦ポイント見るべき動き注目の瞬間
立合い初動の攻め合いどちらが先に前に出るか
押し合い踏ん張る下半身攻めながらもバランスを崩さない
土俵際体勢を立て直す粘り押されても残る力士の根性

観戦の際には、「この力士はどれだけ攻めたか」「最後まで前を向いていたか」という視点で見ると、敢闘賞に値する力士が自然とわかるようになります。取組の結果よりも、その過程にこそ相撲の魅力があるのです。


外国人から見た敢闘賞の意義

外国の方にとって、敢闘賞は相撲文化の中でも理解しやすく、共感を呼びやすい賞です。勝ち負けよりも「努力と挑戦をたたえる」という点が、国や文化を超えて共通の価値として受け入れられています。

観点相撲での意味海外スポーツの類似例
精神性困難に挑み続ける闘志ファイティングスピリット賞
文化的価値努力と忍耐を重んじる日本文化フェアプレー賞
観客との関係感動を共有する舞台観客が共に称える文化

敢闘賞は単なる表彰ではなく、「努力を尊重する文化」そのものを体現しています。特に外国出身力士がこの賞を受けるとき、異文化の中で戦い抜いた努力と勇気が称えられ、多くの人々に感動を与えます。


敢闘賞が相撲に与える影響

敢闘賞の存在は、力士たちに「勝つことだけがすべてではない」という意識を根づかせています。結果にとらわれず、全力でぶつかる精神が相撲の本質です。

影響の対象内容結果
力士攻める意識の維持取組内容の向上
観客感情移入しやすくなる相撲観戦の魅力が増す
相撲界全体精神文化の継承伝統と現代性の調和

敢闘賞は、相撲の魅力を支える原動力でもあります。土俵上で挑み続ける姿勢が、観る人の心に響き、相撲文化の継承にもつながっています。


まとめ

敢闘賞は、単なる結果ではなく「土俵での生きざま」を称える賞です。勝ち負けを超えて、自らの限界に挑み続ける力士に贈られます。そこには、努力・勇気・粘り強さという日本文化の根底にある価値観が息づいています。

相撲を観戦する際には、どの力士が最後まで諦めずに前へ出ていたかに注目してみましょう。勝敗の裏にある一人ひとりの物語を感じ取ることで、相撲の奥深さと人間の強さを知ることができます。

敢闘賞は「努力は報われる」という日本人の精神を象徴する賞です。その価値は時代を超えて変わらず、これからも多くの力士と観客の心に勇気を与え続けるでしょう。

コメント