相撲の十両階級とは?昇進条件と待遇の違いを徹底分析

入門
               

監修者・水口 剛

小学6年生から相撲を始め、報徳学園高校、立命館大学を経て春日山部屋に入門し、プロの力士として活躍。
2016年に現役を引退後、人気のサブスクリプション型ドラマ『サンクチュアリ』に出演。
現在はYouTubeチャンネル「お相撲 ぐっちゃんねる」を運営し、相撲の稽古方法や技術、現役時代の体験談などを発信。

大相撲における十両は、幕下の上に位置し、ここからが関取として正式に認められます。昇進すると月給の支給個室の提供など生活環境が一変し、相撲部屋内での地位も高まります。本記事では、その位置づけ、昇進条件、待遇の変化、歴史的背景までを丁寧に解説します。

十両の位置づけと役割

十両は大相撲の番付において幕下の上位に位置し、定員は28人です。この階級に昇進すると「関取」という呼称が与えられ、名実ともにプロとして活動できます。関取になることで相撲部屋での地位も大きく変わり、下位力士に対する指導役や模範的存在としての役割も担います。
また、十両は観客から見ても大きな魅力を持つ存在です。幕下以下の取組は朝早い時間に行われますが、十両の取組は午後の時間帯に組まれ、多くの観客が見守る中で力を試すことになります。これは力士にとって大きな励みであり、さらに上位である幕内を目指すための重要な経験の場ともなります。


昇進条件と番付の変動

十両への昇進は、幕下上位での優秀な成績が条件となります。特に幕下筆頭から三枚目あたりで6勝1敗や全勝といった好成績を残すと、昇進の可能性が高まります。昇進後は、負け越せばすぐに幕下に戻ることもあり、安定して勝ち越すことが求められます。

昇進の一般的な目安

幕下の位置成績例昇進可能性
幕下筆頭6勝1敗以上高い
幕下二枚目7勝全勝高い
幕下三枚目6勝1敗可能性あり

昇進は実力だけでなく、他力士の成績や番付の空き状況にも左右されます。そのため、常に安定した力を発揮することが不可欠です。


十両の待遇と生活の変化

十両に昇進すると、力士としての生活は大きく変化します。最も大きな変化は月給制の導入です。幕下以下は給与がなく手当のみですが、十両になると安定した収入が得られるようになります。さらに、部屋での生活環境も改善され、個室が与えられます。

十両と幕下の待遇比較

項目幕下十両
給与無給(手当のみ)月給制
部屋大部屋個室
着用まわしのみ色物まわし、羽織袴
弟子への指示基本なし可能

また、地方巡業やメディア出演の機会も増え、力士としての知名度や収入の向上につながります。


十両の歴史と文化的背景

十両という階級は江戸時代から存在しており、当時から「プロ力士の証」として認識されてきました。江戸時代の相撲は興行としての側面が強く、上位の力士ほど多くの観客を集めるため、十両昇進は興行主にとっても重要な意味を持っていました。
現代でも、十両に上がることは力士としての大きな節目であり、部屋の仲間や後援者から盛大に祝われます。特に外国出身の力士が十両に昇進すると、母国のメディアでも報道されるなど国際的な注目を集めることがあります。


十両力士の年間スケジュール

十両力士は年間6場所、各15日間の本場所に出場します。試合だけでなく、地方巡業やファンイベントへの参加も多く、年間を通して多忙です。

十両力士の活動例

時期主な活動
本場所開催月取組出場
本場所間の月稽古・巡業
オフシーズン稽古・イベント出演

本場所期間中は取組のために心身を最高の状態に整えることが求められ、本場所の合間も巡業や稽古で充実した日々を送ります。


十両と外国人力士

近年では、モンゴルやジョージア、アメリカなど各国からの力士が十両に昇進しています。外国人力士にとって、十両昇進は相撲界での地位向上だけでなく、母国での評価向上にも直結します。彼らは言語や文化の壁を乗り越え、日本の相撲文化に溶け込みながら活躍しています。


まとめ

十両は、単なる階級の一つではなく、プロ力士としての出発点です。ここからさらに幕内を目指すためには、実力と安定した成績が欠かせません。昇進によって待遇が大きく変わり、生活の質や社会的評価も向上します。初心者や外国人ファンにとって、十両は相撲観戦の魅力をさらに深める存在です。十両の取組を知ることは、大相撲の奥深さを理解する第一歩となるでしょう。

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