なぜ相撲は「角界」と呼ばれるのか?歴史と社会構造から読み解く日本の国技

入門
               

監修者・水口 剛

小学6年生から相撲を始め、報徳学園高校、立命館大学を経て春日山部屋に入門し、プロの力士として活躍。
2016年に現役を引退後、人気のサブスクリプション型ドラマ『サンクチュアリ』に出演。
現在はYouTubeチャンネル「お相撲 ぐっちゃんねる」を運営し、相撲の稽古方法や技術、現役時代の体験談などを発信。

相撲の世界は古くから角界と呼ばれてきました。この言葉は、土俵上の力士だけでなく、行司や呼出、床山、親方など相撲に関わるすべての人々と社会全体を指します。本記事では、その由来や文化的背景を初心者や外国人の方にも分かりやすく解説します。

角界の意味と範囲

角界とは相撲界全体を指す言葉であり、日本相撲協会に属するすべての関係者が含まれます。力士はもちろん、取り組みを裁く行司、呼出、髷を結う床山、裏方として支える事務方や施設管理の担当者までがこの枠組みに入ります。つまり、角界は競技そのものだけではなく、相撲という文化を支える社会構造全体を意味します。

役割主な仕事内容所属
力士土俵での取り組み各相撲部屋
行司勝敗判定・進行日本相撲協会
呼出土俵呼び上げ・準備日本相撲協会
床山髷結い相撲部屋所属
裏方事務・施設管理日本相撲協会

角界の語源と歴史的背景

角界という呼び名の由来には諸説ありますが、有力なのは「角力(すもう)」の世界を略して使われるようになったという説です。「角力」という漢字表記は古くからあり、力と力を角突き合わせる様を表します。江戸時代には武士階級や庶民の娯楽として相撲が発展し、その内部社会を総称して「角界」と呼ぶ習慣が広まりました。

もう一つの説では、相撲を「力士同士が四方八方へ力を競い合う場」と見なし、その四方を囲う社会全体を「界」と捉えたという見方もあります。いずれにしても、角界という言葉は相撲の長い歴史と密接に結びついています。


角界と一般社会との違い

角界は外部社会とは異なる独自の規律と慣習を持っています。力士は番付によって待遇が大きく変わり、生活スタイルや収入、住まいまでもが番付に左右されます。また、上下関係や礼儀作法は極めて厳格で、日常生活の細部にまでその文化が浸透しています。

項目角界一般社会
身分制度番付で明確化職位や役職
生活様式部屋住み・稽古中心自由居住・勤務
礼儀作法厳格・儀式的職場ごとに異なる
昇進勝ち星や成績業績・評価制度

外国人力士と角界文化

近年、角界には多くの外国人力士が活躍しています。彼らは日本語の習得や相撲作法の理解に努め、伝統と調和しながら実力を発揮しています。一方で、生活習慣や食文化の違い、稽古の厳しさに順応する必要があるため、入門当初は困難も多いのが現実です。しかし、角界は閉鎖的なだけではなく、外部からの影響を受け入れながら進化している点も見逃せません。


角界の行事と年間スケジュール

角界の一年は、本場所と呼ばれる公式大会を中心に展開されます。年間六場所が基本で、それぞれが伝統的な都市で開催されます。このスケジュールに合わせ、力士は日々稽古を重ね、体調管理や技術向上を図ります。

場所開催地
1月初場所東京
3月春場所大阪
5月夏場所東京
7月名古屋場所名古屋
9月秋場所東京
11月九州場所福岡

角界という呼び名の文化的意義

角界という呼び方は単なる業界名ではなく、日本文化の象徴でもあります。相撲は神事と結びつき、土俵は聖域とされ、取り組み前には塩を撒くなど清めの儀式が行われます。こうした精神性や伝統を包み込む言葉として、角界は相撲愛好家にとって特別な響きを持ちます。


まとめ

角界は、力士や関係者の集まりを指すだけでなく、日本の歴史、文化、価値観を体現する社会です。その呼び名には、競技の枠を超えた文化的・精神的広がりが込められています。外国人の方が相撲を学ぶ際にも、角界という言葉の背景を知ることで、より深くこの世界を理解できるでしょう。

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