関脇とは?大相撲を支える三役の要であり、実力と品格を兼ね備えた名誉ある地位

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監修者・水口 剛

小学6年生から相撲を始め、報徳学園高校、立命館大学を経て春日山部屋に入門し、プロの力士として活躍。
2016年に現役を引退後、人気のサブスクリプション型ドラマ『サンクチュアリ』に出演。
現在はYouTubeチャンネル「お相撲 ぐっちゃんねる」を運営し、相撲の稽古方法や技術、現役時代の体験談などを発信。

関脇は、大相撲の番付において大関の下、小結の上に位置する名誉ある地位です。横綱や大関といった最高位への挑戦権を持ちながら、下位力士の挑戦を受け止める防波堤としての役割も果たします。本記事では、その歴史的背景、昇進条件、現代的意義まで詳しく解説します。

関脇とは何か その由来と位置づけ

関脇(せきわけ)は、大相撲において大関の下、小結の上に位置する重要な地位であり、横綱・大関に次ぐ高い格付けです。この地位は「三役(さんやく)」と呼ばれるグループの一角を成しており、三役は幕内力士の中でも特に優れた実力と安定した成績を残した者のみが任命されます。関脇は昇進のための通過点であると同時に、相撲界での名誉の証明でもあります。歴史的に見ても、この地位に到達するには数年間の地道な努力と好成績が必要であり、一度昇進した後も維持するのは容易ではありません。

現代の相撲界では、関脇から大関への昇進は「直近3場所での安定した勝ち越しと優勝争いへの絡み」が求められます。そのため、関脇は次の大関候補として注目される存在であり、多くの力士にとってキャリアの重要な節目です。相撲ファンにとっても、関脇の取組は常に高い注目を集め、上位陣との対戦が組まれるため、見応えのある勝負が期待されます。


関脇の役割と三役の構成

三役は横綱・大関・関脇・小結から構成されますが、その中で関脇は中核的な役割を担います。横綱や大関に挑む挑戦者の最上位として、上位陣を脅かす存在であると同時に、下位の小結や平幕からの挑戦を受ける立場でもあります。つまり、相撲界の橋渡し役として、全体の競技レベルを引き上げる役割を果たしているのです。関脇は取組編成において常に上位力士と対戦するため、厳しい番付運営の中でも勝ち越しを重ねることが求められます。勝ち星の数は、次の昇進や維持に直結し、特に大関候補としての評価に大きく影響します。

地位座位の位置づけ主な条件三役内の役割
横綱最上位引退まで降格なし相撲界の象徴
大関横綱の下大関昇進後も負け越しで関脇へ降格の可能性上位の防衛
関脇大関の下、小結の上安定した勝ち越し橋渡し役
小結関脇の下上位との取組で成績次第昇進候補

関脇への昇進条件と維持の難しさ

関脇への昇進は、通常、小結または平幕での優れた成績によって決まります。特に直近の本場所で上位力士から複数勝利を挙げ、二桁勝利(10勝以上)を記録することが有力な条件となります。ただし、昇進したからといって安泰ではありません。関脇の地位は、連続して負け越せば即座に小結や平幕へ降格する可能性があります。相撲界では「関脇は関脇であり続けるのが難しい」と言われるほど、昇進後の維持が厳しいのです。

昇進元必要成績の目安昇進後の課題
小結二桁勝利+上位撃破上位陣との連戦での勝ち越し
平幕大勝(11勝以上)+三役撃破初の上位総当たりでの安定感
元大関大関からの陥落後の勝ち越し復帰を目指す安定成績

関脇の歴史的名勝負と名力士

相撲の歴史において、関脇は多くの名勝負を生み出してきました。例えば昭和期の名関脇では、貴ノ花(初代)や琴風などが知られ、彼らは大関・横綱への昇進を果たす前に関脇で数々の強豪を倒しました。また、平成以降では稀勢の里照ノ富士が関脇時代に名勝負を繰り広げ、その後大関・横綱へと昇進しています。関脇の取組は常に大一番と呼ばれることが多く、場所の流れを左右することも珍しくありません。

力士名関脇時代の特徴その後の経歴
貴ノ花(初代)技の切れと粘り強さ大関昇進
琴風突き押しと寄りの強さ大関昇進
稀勢の里正攻法の取り口横綱昇進
照ノ富士怪力と寄り切り横綱昇進

関脇の地位が持つ象徴的な意味

関脇は、単なる順位ではなく「実力と信頼の証」としての意味を持ちます。観客や相撲ファンからの期待も高く、その取組は会場全体を熱気で包み込みます。力士にとっては、関脇という肩書はスポンサーや後援会の支援を得る上でも有利に働く場合が多く、引退後の相撲協会での地位や活動にも影響を与えることがあります。そのため、関脇という称号は単なる番付上の位置ではなく、力士人生の大きな分岐点といえるでしょう。


現代の関脇の役割と国際化の影響

現代の関脇は、単に大関や横綱への挑戦者であるだけでなく、相撲界全体の競技レベルの底上げ役としての役割が大きくなっています。特に、外国出身力士の台頭により、多様な相撲スタイルが土俵に持ち込まれるようになり、関脇の役割も進化しています。外国出身力士は体格や筋力に優れた者が多く、その力を武器に関脇の座に就くケースも増えています。一方で、日本出身力士も技術面や精神面の強化を図り、異なるタイプの力士同士が関脇の座を争うことで、取組の質が高まり、観客にとっても見応えのある土俵が展開されています。

また、メディア露出やSNSを通じた発信が盛んになったことで、関脇が持つ影響力は全国規模だけでなく、海外ファンにも広がっています。地方巡業やイベントでは関脇が顔となってプロモーション活動を行い、相撲文化の発信者としての役割も担っています。つまり、関脇は競技と文化の両面で相撲界を支える存在へと変化してきたのです。

関脇の役割具体例影響範囲
上位挑戦横綱・大関からの白星場所の星勘定に影響
技術的指標若手や下位力士の手本稽古場・巡業
文化発信イベント出演・SNS発信国内外のファン層拡大
興行貢献試合の盛り上げ興行収益や話題性

関脇から大関・横綱へ至るための鍵

関脇から大関、さらには横綱へと昇進するためには、単に勝ち星を積み上げるだけでは不十分です。対上位力士との勝率、勝ち方の説得力、安定感が三位一体で評価されます。特に大関昇進では「三場所33勝」が一つの目安とされますが、これは形式的な条件ではなく、内容面が伴っていなければ達成しても昇進できない場合があります。関脇で安定した成績を残すには、立合いから決まり手までの一連の流れを状況に応じて変化させる柔軟性が求められます。さらに、連敗を断ち切る精神力、怪我を抱えながらも取り切る勝負根性なども評価の対象となります。

過去には関脇から一気に横綱まで駆け上がった力士もいれば、関脇に長く在位し続け「名関脇」として名を残した力士もいます。どちらの道も相撲史に刻まれ、後進の力士たちに影響を与えてきました。

昇進目安評価項目補足
三場所33勝勝率の高さ特に上位戦での勝利が重視
内容の説得力勝ち方の安定感多彩な決まり手が有効
精神面の強さ連敗ストップ能力怪我や逆境での粘り
技術面の進化相手に応じた戦術変更稽古での準備力

まとめ

関脇は、実力・安定感・品格を兼ね備えた力士だけが到達できる相撲界の名誉ある地位です。横綱や大関への挑戦者でありながら、下位の挑戦を受け止める防波堤としても機能します。そのため、一場所一場所が昇進や降格に直結する緊張感に包まれています。歴史を振り返れば、多くの名関脇が相撲史を彩り、時代ごとの相撲の質を引き上げてきました。現代では競技面だけでなく文化発信や国際交流の役割も担い、相撲界全体に大きな影響を与えています。

関脇という肩書は、単なる番付上の位置を超えた力士人生の節目であり、相撲文化の象徴です。ここでの活躍はその後の相撲人生を左右し、ファンの記憶にも長く残ります。だからこそ、関脇は常に全力で土俵に臨み、その一番一番で自らの価値を証明し続けるのです。

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