相撲の取り組み中にまわしが外れたらどうなる？現代では極めて稀な不浄負けとは

入門

2025.08.20

監修者・水口剛

元力士・祥鳳剛（本名：水口剛）。春日山部屋に所属し、2004年に初土俵、幕下東四枚目まで昇進。白鵬関の代理として弓取り式を務めた経験を持つ。
引退後はYouTubeチャンネル「お相撲ぐっちゃんねる」の運営や稽古会の主催、相撲体験イベントの企画などを通じて、相撲文化の国内外への発信に尽力。
Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』では炎鳥役として出演したほか、舞台パフォーマンスなどにも参加。
現在は訪日外国人向けのインバウンド相撲イベントや相撲ショーを開催するほか、パーソナルトレーナーとしても活動し、相撲の魅力を伝えながら健康づくりにも貢献している。

相撲は日本の伝統文化であり、土俵は神聖な場とされています。力士が必ず身に付けるまわしは戦いの道具であると同時に礼儀を守る装具です。しかし、もし取り組み中にまわしが外れてしまったらどうなるのでしょうか。本記事では、不浄負けのルールや背景を分かりやすく紹介します。

相撲におけるまわしの役割
まわしが外れた場合のルール
不浄負けが定められている理由
力士と付け人によるまわしの準備
過去の不浄負けの事例
まわしと力士の精神的な結び付き
まとめ

相撲におけるまわしの役割

まわしは力士にとって欠かせない装束です。腰に巻かれた一枚の布が、攻防の中心となり、相手を引き付けたり投げ飛ばしたりする際の手掛かりとなります。さらに、まわしを締めることで力士は精神を集中させ、土俵に上がる覚悟を整えます。

まわしの特徴を整理すると次の通りです。

項目	内容
材質	綿、絹など強靭な布
長さ	約7メートルから10メートル
幅	約60センチ前後
色	幕下以下は黒色、十両以上は色付き可能
役割	技の拠り所、精神的象徴、礼儀の一部

こうした特徴からも分かるように、まわしは単なる布ではなく、力士にとって戦うための武具であり、同時に土俵を清める象徴でもあります。

まわしが外れた場合のルール

取り組み中にまわしが外れ、陰部が露出すると「不浄負け」となります。これは相撲のルールの中でも極めて厳しいものです。土俵は神聖な場であるため、露出は許されません。

行司の判定基準を表にまとめると以下のようになります。

状況	判定	補足説明
まわしが緩んだだけ	待った	取り組みを一時中断し締め直し可能
前袋が外れて露出	不浄負け	即座に敗北
一部がほどけたが露出なし	継続	取り組みを続行可能

つまり、露出が確認された瞬間に即負けとなる点が最も重要です。

不浄負けが定められている理由

不浄負けというルールが存在するのは、相撲が神事に由来しているからです。土俵は神聖な場であり、清浄を保たなければなりません。そのため、陰部の露出は「不浄」とみなされ、取り組みの続行は認められません。

不浄負けに関する理由を整理しました。

理由	説明
神聖性の保持	土俵は神域であり、穢れを避ける必要がある
礼儀と格式	力士の装束は礼儀を重んじるものとされる
公衆の観点	観客に不快感を与えないための配慮

こうした背景から、まわしが外れた場合の扱いは非常に厳格になっているのです。

力士と付け人によるまわしの準備

取り組み前、力士は数人の付け人と共にまわしを締めます。この準備は単なる装着ではなく、一種の儀式でもあります。付け人は力士の体型に合わせて最も外れにくい結び方を施し、何重にも巻き付けて固定します。

まわしを締める工程を段階的に表すと次のようになります。

工程	内容
1	まわしを体に巻き付ける
2	しっかりと締め上げる
3	結び目を背中側に整える
4	裾を折り返して固定
5	最終確認を行う

このように入念な手順を踏むことで、取り組み中に外れるリスクを最小限にしています。

過去の不浄負けの事例

近代以降では不浄負けの事例はほとんどありませんが、江戸時代や大正時代にはまわしが解けて敗北となることがありました。当時のまわしは現在ほど強靭ではなく、激しい攻防の中でほどけることもあったのです。

時代ごとの不浄負けの傾向をまとめると以下の通りです。

時代	特徴	不浄負けの発生頻度
江戸時代	素材が弱く外れやすい	稀に発生
明治時代	改良されつつある	まれに発生
昭和以降	強靭な素材と工夫	ほぼ皆無

現在では技術の向上により、不浄負けが発生することは非常に稀です。しかし、ルールとして残されていること自体が抑止力となっています。